走り込んでコートサイドからボールを受けてリバースレイアップに行った。


笛が鳴る。ファウルです。


残り5秒。

勝負の命運はフリースローに託されます。

71-72、その時1点差まで追いついていました。


岡本は観客が見守る静寂の中、その2本を見事に射抜きました。


Wリーグプレイオフ準決勝第1戦、ENEOSサンフラワーズ対デンソーアイリスの戦いは、残り5分で15点の点差を逆転してENEOSが先勝しました。


まさか激しいこのゲームの結末がフリースローの成否で決まるとは誰が予想したでしょう。


岡本のフリースローの僅か5秒前、残り10秒の場面、その岡本のファウルによって先にフリースローのチャンスを得たのはデンソー髙田でした。


プレッシャーがないはずがありません。

この日32得点の髙田の放った2本のシュートはリングから溢れました。



奇しくも、次に髙田のファウルによってフリースローのチャンスを最後に得たのが岡本でした。


そこを決めきるキャプテンの精神力は賞賛に値します。


翌日の第2戦、デンソーは第4クォーターに猛攻で健闘しましたが届かず、69-67で2点差で敗れ、ENEOSがWリーグ決勝へと駒を進めました。


【デンソー、ディフェンスの進化】


今季からデンソーはセルビア代表監督のマリーナ・マルコヴィッチHCが指揮をとっており、シーズンを通したデンソーの進化は今シーズン15勝1敗で圧倒的な強さを見せている女王ENEOSを倒すまであと一息のところでした。


その進化はオフェンスでは、髙田、赤穂さくら、ひまわり姉妹と稲井、本川によるピックアンドロールや、髙田やさくらがエルボーの位置に並んでスクリーナーを務めるカーテンスクリーンを使ったオフボールスクリーンなど、この試合でもその多彩なセットオフェンスを見せてくれました。


それだけではなく本川、稲井らハンドラーが縦に割ってドライブで切れ込んだりキックアウトしたりもします。もちろん髙田のポストプレー、リバウンド、セカンドチャンスポイントは得点源です。


しかし、ここまでは皇后杯でも見せていてENEOSもすでに体験済みです。


第1戦でENEOSをもっと追い込んだのは進化したディフェンスでした。


第1クォーター、第2クォーター両者は一進一体の攻防が続いていました。ENEOSは宮崎、岡本を中心ににトラジションの速さと2人のアウトサイドシュートで組み立て、デンソーは髙田のペイントアタックで対抗して36-36の同点で折り返しました。


第3クォーター序盤ENEOS宮崎、宮沢の連続スリーポイントのあと、デンソーがタイムアウトを取った後からデンソーのディフェンスが変わりました。


ENEOSのピックに対してスイッチするのですが、ミスマッチを避けるローテーションをする様になりました。


こんな場面がありました。#15宮崎のマーク稲井はビッグマン#29中村のピックに対応して中村のマークのさくらとスイッチします。


スイッチ後、ロールしてゴールに向かう#29中村をいったんシールしてフリースローライン上部あたりで髙田とマークの受け渡しをします。


稲井はそのまま右ウィングに流れて髙田がマークしていた#52宮澤につきました。


髙田はパスを受けた#29中村のペイントの侵入を止めました。


ターンオーバーから稲井がレイアップで得点してゲームの流れを引き寄せました。



その後ENEOSの取ったタイムアウト明けにはデンソーが、オールコートプレスを発動して追い討ちをかけます。


第3クォーターは48-56。8点リードとなりました。


【ENEOSの負けん気、オールコートプレス】


第4クォーターに入っても残り5分までENEOSはわずか6点に抑えられます。

一方でデンソーは髙田を中心に13得点します。

54-69。15点差


残り4分50秒。

岡本がマークに構わずミドルを決めたのがギアを切り替えた瞬間でした。


そこからは「こちらが本物」と言わんばかりに試合の最後までオールコートプレスで激しく当たります。



ダブルチームでスティール、スティール、スティール。第4クォーター残り5分だけで5個奪っています。この試合全てで13個です。


ここから先デンソーに与えた点数はわずか3点、奪った点数は19点でした。


物凄い集中力、まさか誰も逆転するとは思わなかったでしょう。


【渡嘉敷のチームへの鼓舞】


ゲームを通して前十字靭帯損傷で試合には出られない渡嘉敷は会場中に聴こえるほどの大きな声でチームを鼓舞し続けていました。


コート上には岡本キャプテンがプレーでチームを引っ張り、ベンチでは渡嘉敷がチームを後押しする。


どんな状況に陥っても全員が諦めない。そんな構図が見て取れました。



本当に強い、負けないチームです。この日のバスケットの内容はデンソーの方が良かったと見えました。


技術や戦略を超えるものがあります。

「気持ち」とか「負けん気」


一人では折れて諦めてしまいそうになる心を渡嘉敷の声で奮い立たせている。だから彼女はベンチに必要なのでしょう。梅嵜HCはそう考えて怪我しているメンバーをベンチ入りさせているに違いないと思い、感動に浸って代々木第二体育館を後にしました。


今週末からの決勝シリーズはENEOSサンフラワーズ対トヨタ自動車アンテロープスです。皇后杯と同じカード、今から楽しみです。