田臥のトップから放たれたスリーポイントは放物線を描いてスウィッシュしました。


残り37秒、96-76、20点のリードです。

レジェンド田臥が始末をつけるような印象的な一撃でブレックスアリーナは大きなクラップ音に揺れていました。

Bリーグ20-21シーズンセミファイナル注目の宇都宮-川崎戦は2連勝で宇都宮が決勝進出を決めました。

スコアは第1ゲーム宇都宮の68-65、第2ゲームは96-78。


レギュラーシーズン終盤にはどこも止めることができないだろうと言われていた川崎ビッグラインナップを攻略しての決勝進出です。


第1ゲームはロースコアの守り合い、第2ゲームはスリーポイントの殴り合いでした。見応えあった宇都宮の攻略を振り返りたいと思います。


【宇都宮のオンスリーマッチアップとスイッチ】


第1ゲーム、川崎はビッグラインナップがスタートでした。藤井、辻、アギラール、ヒース、ファジーカス。対する宇都宮は鵤、遠藤、ピーク、ロシター、スコットです。アギラールにスコット、ヒースにピークがマッチアップしていました。


ヒースのマークがピークでミスマッチなのですが、宇都宮はオールスイッチで対応するためあまり関係ないのかもしれません。

基本的にヒースやニックのポストプレーにはダブルチームに行きません。

ミスマッチになった場合は仕方ない。と言う選択をしていました。


そのかわり高度なスイッチングで出来る限りミスマッチができないような効率的(1番近くのマークマンにスイッチする)かつ効果的(ミスマッチができても移動の間の秒のタイミングでリスイッチしてミスマッチを解消)にスイッチしている、他のチームではにわかにはできないディフェンスをしています。


特にピークはディフェンスでいい働きをしていたと思われます。川崎というチームはスリーポイントが入りだすと止まらないチームです。シューターの辻の他にファジーカス、ヒース、アギラールのビッグマンが全員スリーが狙えるからです。

そこを抑えること、スリーを撃たせないことが第1でした。


川崎はビッグマンがポップしてスリーを狙うためオフェンスリバウンドはあまり獲れません。第1ゲームの勝因のひとつはそこでした。


第1ゲーム、オフェンスリバウンドは宇都宮25本に対して川崎7本でした。そこからのセカンドチャンスポイントは宇都宮19点に対して川崎9点です。


ヒースはこの日9得点スリーゼロでした。ピーク、ギブスのこの日のディフェンスでの健闘が伺えます。


【ゲームクリエイターはロシター】


川崎には日本最高レベルのガードが揃っています。藤井、篠山、辻ゲームメイクはこの3人に任されています。オンスリーの場合は徹底してミスマッチを狙います。

一方で宇都宮はボールプッシュ、ハンドリング、ゲームメイクはロシターに任されていました。

鵤、遠藤はゲームコントロールというよりも、そのフィジカルとシュート力でミスマッチでも体を張り、オープンではスリーを狙うのが宇都宮でのミッションに見えます。

ハンドリングの怪しいところは目を瞑り、ロシターやギブスがボールプッシュすることで川崎のビッグマンがマークのためゴール下から釣り上がります。上がればスペースが生まれます。一方でディフェンスリバウンドがあるので簡単には上がって来れません。宇都宮がそのオフェンスでより多くのオープンを作っていたのはこのためでしょう。


トップにロシター、右コーナーからウィングに上がる遠藤がロシターからパスを受けるとロシターはダウンスリーンをかけます。遠藤はロシターをカールしてマークの辻をロシターに引っ掛けて中央からゴールに向かいます。

ヘルプが遠藤に集まったところでロールしたロシターにパスを通してロシターが決める。もしくはキックアウトして逆サイドのピークがスリーを狙います。

などなどロシタースタートの攻撃は冴えていました。

 

【第2ゲーム実は川崎のペース。止めたのはピーク】


第2ゲームは20点の差がついて、残り1分にはあの冷静なファジーカスがファウルアウトしてしまいました。


一見宇都宮の大勝ですが、第2クォーターのスリーポイントの撃ち合いは本来は川崎のやりたいバスケットです。川崎のスリーは前半50%の確率で入っていました。こういう時の川崎は本当は負けません。


辻、長谷川のスリーに対してピーク、ナベが撃ち合う。観ている方はこの上なくおもしろかったです。


このまま撃ち合いで、ファジーカス、ヒースのスリーが入りだすとレギュラーシーズンアルバルク戦のようにボコボコにされてしまいます。

そこに立ち塞がったのは、鋭い読みで3本のスティールで川崎の勢いを止めたピークでした。


第2クォーター、オフィシャルタイムアウト明け残り4分56秒。川崎の攻撃。


左コーナーの辻がファジーカスのダウンスクリーンで左ウィングに上がり、トップの篠山からパスを受けます。さらにヒースがウィングでスクリーンセット、追いかけてくる遠藤にヒットします。


フリーの辻は右ウィングに展開した篠山にパスを送り返しました。篠山は右ローポストにドリブルで侵入、左ウィングからロールしてゴール下に進んだヒースにアリウープパスを送りました。


そこまでは川崎のデザインプレーです。


そこに右コーナーからウィングにスペースを埋めるため移動していた長谷川のマークについていたピークが長谷川のマークを外して篠山のロブをカットしたのです。


第2クォーター残り1分54秒。

川崎のタイムアウト明け

藤井がトップでエントリー、ヒースが右エルボー、ファジーカスが左エルボーのホーンセット。


右ヒースがスクリーンセット。藤井のマーク遠藤とヒースのマークスコットはスイッチします。


遠藤とヒースはミスマッチです。藤井は見逃さずヒースへゴール前にロブパスを送ります。


これも川崎の狙いです。


ここでも、右コーナー長谷川のマークのピークはこのバスを読み切ってスティールしました。


この後の展開でも連続でピークが川崎のパスをスティールしてスコットのプザービーターを呼び込み

前半を42-40の2点リードで後半を迎えたのです。


この一連のディフェンスで川崎の勢いを抑えることに成功したのでした。


【竹内公輔の2本のリバウンド】


第2ゲームは、後半に入ると川崎のスリーの確率が落ちます。オープンを作っても入らなくなりました。その間に宇都宮の強みのオフェンスリバウンド、セカンドチャンスポイントの差がじわじわと出てきます。


川崎の攻め手は、宇都宮のスイッチディフェンスで生じるミスマッチを突くことと、フリースローで繋ぐことになります。


第3クォーター残り4分には安斎HCは、宇都宮のビッグラインナップを披露しました。


比江島、ピーク、公輔、ロシター、スコット

対する川崎は

藤井、辻、カルファニ、ヒース、ファジーカスです。



もはや宇都宮にはPGがいません。それでも困らないのは宇都宮のスタイルがもともとロシターがメイクすることが多いからでしょう。


残り3分40秒

カンバックを狙う川崎のディフェンスプレッシャーに対して比江島のスリー1本目外れます。

ピークのスリー2本目も外れます。

共にリバウンドを奪ったのは日本人ビッグマン竹内公輔でした。3本目比江島のスリーが決まって63-50


流れは完全に宇都宮のものとなりました。


【世界基準の川崎オンスリーに対抗した】


今シーズンのBリーグのトピックはなんといっても帰化選手1人と外国籍2人のオンコートが可能になった事でしょう。


CSセミファイナルに残った4チームのうち琉球を除いた、大阪、川崎、宇都宮は帰化選手を擁するチームとなり過去2連覇のアルバルクはほとんど選手の入れ替えがないままシーズンを戦い、CS進出すら逃しています。


簡単に言えば「Bリーグのレベルの底上げがなされたのは間違いない」ということです。


オリンピック、ワールドカップ。

これから世界と戦う日本バスケにとって、世界基準の強い川崎を破るチームが出てくるという事は川崎ブースターには申し訳ないですが、良い事ではないかと考えています。


今シーズンのBリーグファイナル。

横浜アリーナ


どんな戦いが観られるのか楽しみで仕方ありません。

photo kii