天皇杯の醍醐味は、なんといってもカテゴリーの違いを乗り越えて、B2、B3といったアンダーカテゴリーのチームがB1チームに下克上を巻き起こすことがあると言うところです。

第97回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会第3次ラウンドはそんな波乱の展開が見られました。

サンロッカーズ渋谷は10月30日(土)、佐賀県の唐津市文化体育館で行われた第3次ラウンドトーナメント初戦でB3の長崎ヴェルカに84-85の僅差で逆転負け喫しました。同会場ではB1群馬がB2西宮に88-94で敗れています。

10月31日(日)、アリーナ立川立飛で行われた第3次ラウンドトーナメント1回戦では横浜ビー・コルセアーズがB2香川ファイブアローズに83-91で逆転負けを食らいました。

そしてアリーナ立川立飛での注目は、最短でのB1昇格と5年以内のB1優勝を目標として掲げて今シーズンからB3リーグに参入したアルティーリ千葉とB1トップチームのひとつ、アルバルク東京とのゲームです。
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結果はアルバルクが96-79と貫禄を見せ勝利しました。しかしながら、前半は46-41とアルバルクの5点リードと、ほぼ互角の戦いぶりでした。

そこで、この試合のA千葉の戦い方と第3クォーター突き放したアルバルクの対応について記してみたいと思います。

B1クラスのポテンシャル、アルティーリ千葉

A千葉のロスター、スタッフは長崎ヴェルカとならび、もはやB3チームのものとは思えません。

シューターの大塚裕土、岡田優介、小林大祐の3人はB1での経験、実績が豊富なベテランです。新しいチームの土台作りに欠かせない人材と言えるでしょう。

ポイントガードの杉本は昨シーズンFE名古屋でB2アシストランキング2位の実力者です。また、23才の若いガード藤本もスピードがあるハンドラーです。

ビッグマンには富山、名古屋で活躍したレオ・ライオンズと琉球で2015-16シーズン最後のbjリーグファイナルMVPを獲ったイバン・ラべネルがいます。2人とも走れる、ペイントで勝負できる、外からも高確率でスリーポイントが狙えます。

指導者には元オーストラリア代表HCのアンドレ•レマニスとなれば、B1チームに劣らない豪華なメンバーと言えるでしょう。
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前半のアルティーリの戦い方

B1優勝候補のアルバルクに対してA千葉はクレバー且つアグレッシブに戦いました。

オフェンスでは大塚とラベネルが積極的にスリーポイントを狙っていました。

もちろん、大塚やラベネルのスリーをアルバルクはケアしましたが、そこを囮に見せながら裏から小林がカットを狙う動きをします。

第1クォーター残り7分51秒
ライオンズがトップでボールを受けます。右コーナーに大塚がいます。杉本が右ミドルポストで大塚にダウンスクリーンをセットします。大塚はこれを使わず逆コーナーに流れます。(注意は大塚に向きます)杉本は右ウィングに上がりライオンズからボールをもらい方向転換してスピードを上げてゴール方向にドライブします。

アルバルクディフェンスのケアはボールマンの杉本、オフボールマンでは逆コーナー大塚、トップのライオンズに向いていました。

杉本にはライオンズのマーカーロシターが下がって周人と挟むように守ります。ところが、左ウィングから大貴の裏を取ってカットしてきた小林にパスが渡りフリーでレイアップが決まりました。
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もう1人のラベネルはビッグマンでありながらロングシュートが上手い選手です。

第1クォーター残り6分58秒
アルバルクのアレックスのディフェンスは基本的にドロップで守ることが多いので、マークが緩くなりがちです。そこで、シュート力のあるラベネルは積極的にスリーポイントを狙います。

第1クォーター残り4分2秒
ラベネルのスリーが入るとみてアレックスがクローズアウトすると、今度はドライブしてペイントアタックを仕掛けました。


一方A千葉のディフェンスは、杉本、藤本らガードの選手がアルバルクのピックに対してアンダーで守っていました。

アルバルクのオフェンスアクションはピックアンドロールとハンドオフが多いのでスクリーンに当たってズレを作られるよりも、壁をすり抜けて素早く追うという選択をしていました。それでもディフェンスが遅れるとローテーションして守ります。

ローテーションの後、ロシターやサイズにミスマッチを突かれて彼らの個人技から得点を許すこともありますが、A千葉は常にディフェンスリバウンドや素早いエンドインバウンズから反撃のファストブレイクを狙っています。
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アルバルクはオフェンスリバウンドを取りに行っていたので、戻りが少し遅くなり、そこを突かれて効果的な速攻を出され、たびたびトランジションから得点を許していました。

アルバルクのアジャスト力

第1クォーター28-23、第2クォーター18-18とA千葉に食らいつかれていたアルバルクでしたが第3クォーターに32-21と突き放しました。

なぜそれが出来たのか?

まず最初に、A千葉は第3クォーター初めに2-3ゾーンを敷いてリズムを変えてきましたが、ゾーンに対するセオリー通り大貴がスリーを決めてペースを引き寄せました。

ここからアルバルクはディフェンスの強度が上がります。

大貴のスティール、アレックスのブロック、ロシターのディフレクション。A千葉に自由に攻めさせません。
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さらに、アルバルクのオフェンスに変化が現れます。

第3クォーター8分40秒
テイラーとアレックスのピックアンドロール。

杉本はアレックスとラベネルの下を通り(アンダー)やや遅れてついて行きます。テイラーはさらにリピックします。杉本はさらに遅れます。そこでテイラーは一度左ウィングの大貴にキックアウト、ディフェンスは予想外のパスに振られます。

すぐさま大貴はロールしていたアレックスにゴール下、フリーの状態でアシストパスを通しました。

テイラーはピックアンドロールからロールマン以外の選手にキックアウトする事でディフェンスを慌てさせたのでした。

また、こういうケースもありました。

第3クォーター6分53秒
ピックからリピックする事でマークマン(杉本)は振られて遅れます。その時、ロールマン(アレックス)がロールしますがアンダーで追ったピックユーザー(大貴)のディフェンス(杉本)がロールマン(アレックス)のディフェンスプレーヤー(ラベネル)と重なるため動けず、ロールマン(アレックス)はフリーとなりました。

このようにピックアンドロールからロシター、アレックス、サイズのインサイドを活かして、且つ、コーナーに展開するなどしてアウトサイドのシュートを効果的に沈める事でリードを広げて行ったのでした。
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ゲームの中に欠点をアジャストする能力があることは、千葉ジェッツ、宇都宮、川崎などB1トップレベルと言われるチームの共通項のように思います。

とはいえ、A千葉は今シーズンがクラブを創設して初参戦のシーズンであり、なおかつB3で6試合しか消化していないのにもかかわらず、アルバルクを相手に前半は互角の試合展開を見せました。本当に末恐ろしいチームです。杉本や若いガード藤本が成長してベテランと上手く絡むことで本当に2シーズンでB1に駆け上がってリーグ戦をアルバルクと戦うこととなりそうです。

photos by ともみん