東京オリンピックで女子バスケ代表チームを銀メダルに導き、女子代表HCから男子バスケ代表HCへ異例の抜擢を受けたトム・ホーバスHC。

彼の目指すバスケットを押し測るのは難しいことではありません。
4ヶ月前私たちはそれを女子代表で目撃しているからです。

小さな日本女子はスピード、アジリティ、シュート力を最大限に活かしたバスケットを展開しました。
そして、東京オリンピックの場で銀メダルを獲得して日本中を興奮の渦に巻き込んだのです。

11月27日(土)、28日(日)仙台ゼビオアリーナで行われたFIBAワールドカップ2023アジア地区予Window1、日本代表対中国代表でホーバスジャパンのお披露目となりました。
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結果は第1戦63-79、第2戦73-106点とFIBAランキング28位(日本は35位)の中国に圧倒されました。

しかし、日本はチームを再編してスタートしたばかり。しかも2023年マニラ、ジャカルタ、沖縄で行われるワールドカップ本戦を開催国枠で出場権を得ている日本と、パリオリンピック予選も兼ねるワールドカップ本戦に出場するため負けられない中国との対戦ともなれば、ある程度予測できた結果ではあります。

日本代表にとって、今は勝敗よりゲームの中で表現されたパフォーマンスの方が大切ではないかと思います。

そこで、ホーバス日本代表が今回どのようなバスケを見せたのか、そしてこれからの代表を担うタレントを見つけることができたのか?こちらを検証したいと思います。

新生日本の見せたオフェンスの特徴

ホーバスHCが指導をしていた女子代表はテンポはハイペースで、シュートは高確率のスリーポイント放っていました。

具体的にはホーバスHCが女子代表について「80のポゼッションでスリーポイントは40%必要」とオリンピック前に語っていたのを覚えています。

今回の男子日本代表は第1ゲームでは73.48のポゼッション、第2ゲームでは80.36のポゼッションです。平均では76.92でした。対する中国の平均ポゼッションは74.86です。

Bリーグで比較するとわかりやすいので載せますと、ポゼッション1位は滋賀の78.83です。2位群馬77.70、3位名古屋76.91です。

並べてみるとオフェンシブ、速攻型もしくはスリーポイント重視型のチームが並び日本代表のハイペースぶりはBリーグトップクラスと同じレベルということがわかります。

ではスリーポイントはどうでしょう。2試合の平均で日本はスリーポイントの確率22.38%、スリーポイントシュートのアテンプトはなんと33.5本でした。一方中国は平均でスリーポイント確率46.34%でアテンプトは20.5本です。
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中国は第2ゲームの戦い方を、エースセンターの15番ジョウ・チーを怪我で欠いたため、ペイント中心の攻めから8番ジャオ・レイ、7番ジャン・ジーリン中心にアウトサイドで攻める戦術に変えて、しかも上手く機能していためスリーポイントが高確率でした。

一方で、日本のスリーの確率は2日間通して非常に悪かったです。選手にハイペースということが頭にあるのか、慌てて打っている感じがしてシュートセレクションがあまり良いものには感じられませんでした。

注目すべきは日本のスリーポイント試投数です。日本平均33.5本、中国平均20.5本、その差13本です。

因みにBリーグでの平均スリーポイント試投数のトップ3と比べてみましょう。

1位島根31本、2位川崎29.21本、3位名古屋27.92本です。
Bリーグ1位の金丸晃輔擁する島根よりもっと打っているのです。

つまり、日本代表は驚くほどスリーポイントを試投していることがわかるのです。
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新生日本のオフェンスの特徴はあまりピック&ロールを使わず、アウトサイドに陣取りオフボールでのカッティングを繰り返しつつ、ボールマンのペイントタッチからキックアウトスリーやカットインからの合せで得点を狙います。しかも、それを時間をかけずにシュートを狙っているところにあります。

トランジションからの速い攻めも試行していましたが、中国のファウルしてでも止めるリムプロテクトに思うようなファストブレイクはできていませんでした。

新生日本のディフェンスので特徴

中国戦で日本の見せたディフェンスはマンツーマン、ハードショウ、1-3-1のゾーンディフェンス、オールコートプレスでした。

中国のオフェンスはハンドオフからピック&ロールという攻めが多かったのですが、日本はハンドラーにマーカーとスクリーナーのマーカーがダブルチームで追うというトラップディフェンス(ブリッツ)を試していました。

これに対し中国はハンドラーがディフェンス2人の間を割って(スプリット)抜き去ったり、ショウに来たら2、3歩ドリブルしながら下がり(リトリート)スキップパスを展開して数的有利を作りスリーポイントを決めていました。

また、日本のマンツーマンはサイズの小さなガードの選手がスイッチするとどうしてもミスマッチが起こります。
そこを中国は突いて攻めていました。
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そこで、1-3-1のゾーンでは2列目真ん中に富樫、齋藤、寺嶋など小さな選手を置いてボールマンにはチェンバースや古川などの3番の選手に付かせてサイズのミスマッチを最小限に抑えていました。

しかし中国はウィングがオープンになりやすいこのゾーンディフェンスのウィークポイントを攻めて、ウィングから6番グォや8番ジャオがスリーポイントを放ち、ウィングを詰めるとハイポストに落としてハイローで攻略しました。

または、ホーンズセットを組んで両エルボーにビッグマンを据えることで、日本の2列目の選手2人がマークせざる得なくなり、またもウィングをフリーにしてしまいパスを回されコーナースリーに展開されていました。
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第2試合第2クォーター残り29秒
1-3-1からブリッツの要素を試してもいました。
17番スンがボールプッシュ、古川が付きます。
2列目ゾーンは相手から見て右からエヴァンス、森川、張本。張本がスンにダブルチームに行きます。張本がスンに行き着く前に左ウィングの8番ジャオ・レイにスキップパス、すぐさま右コーナー7番ジャン・ジーリンにパスが行きスリーポイントを決められました。

リバウンドに関しては第1ゲームは日本34本に対して中国53本と圧倒されましたが、第2ゲームでは日本31本に中国35本と改善し、しかもオフェンスリバウンドは日本14本に中国5本と取り勝っています。

これは第2ゲームに中国212センチジョウ・チーの欠場や相手がスリーポイント攻撃にシフトしたことでボールがリングから大きく跳ねていた点も考慮されるべきですが、一定の評価はできると思います。

しかしながら、オフェンスリバウンドを執拗に取りにいくと相手ディフェンスリバウンドを取られてそこからのトランジションで速攻を出されることも多くありました。本来は日本のやりたいバスケットです。

いずれにしても、ディフェンスの構築はこれからという印象でした。志向しているのはアグレッシブなディフェンスを基本にハードショウからスティールを狙う積極的なディフェンスだと思われます。

日本の原石を探せ

試合内容では完敗の中国戦でしたが、その中で輝きを見せる選手がいました。そんな選手のプレーを紹介します。

シェーファーアヴィ幸樹
スリーポイントが打てる日本の貴重なビッグマン。三河に入ってからの成長が著しい。プレーの幅がどんどん広がっています。

第1ゲーム第1クォーター残り1分15秒
齋藤がトップ、左ウィングのシェーファーにバックビハインドパス、左コーナーの古川が上がってシェーファーとハンドオフからカールしてペイントタッチします。古川にディフェンスが寄ったところローポストに移動したシェーファーにパス、シェーファーがラインドライブしてディフェンスを引きつけ逆コーナーの西田にパス。西田もペイントにドライブさらにディフェンスを引きつけダンカースポットのシェーファーにパス、堅い中国のゴール下をこじ開けシェーファーのバスケットカウントが決まりました。

齋藤拓実
残したスタッツは平凡でしたがポイントガードとしてチームのリズムを整え、その切れ味鋭いプレーは印象に残りました。
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第1ゲーム第1クォーター残り29秒
齋藤がトップ、エヴァンスのスクリーンを使って左からドライブしてペイント中央でストップ、ステップインシュートと見せかけてノールックで右ウィングの西田にパスアウト、西田はスリーポイントを決めました。


西田優大
初代表選出でも物怖じしないアグレッシブなアタックと左手から放たれるスリーポイントはホーバスバスケにフィットしそうです。
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第1ゲーム第2クォーター残り9分45秒
西田、右コーナーに配置。
目の前に212センチ中国のエース、ジョウ・チーがいます。コーナーでパスを受け、ステップバックしてスリーポイントシュートが決まりました。190センチの西田が212センチのジョウのシュートコンテストにあっても動じない心臓がいいです。

寺嶋    良
ドリブルの切れ味、スピード、パスセンスが光っていました。スピード、アジリティでペイントアタックを決めきったことでキックアウトパスが有効になりました。
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第2ゲーム第1クォーター残り6分34秒
左コーナーからドライブ、リバースレイアップを成功させました。代表初得点でした。個人技で得点できる技術を証明し、その後の味方を生かすパスが活きました。

今、日本代表は言うなればトライアウトを始めたばかりです。日本にあった戦術の構築とメンバー選出をBリーグのリーグ戦を戦いながら少ない代表活動の中で創り上げていくという難しいミッションです。
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この2日で新しい可能性に満ちた素質を見ることができました。これからもっと多くのことと多くの選手で試しながら史上最強のチームを作ってもらいたいです。

ワールドカップで勝利を収めてパリへの道筋をつけて欲しいと切に願っています。
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photos by kii

参照サイト    Bleagueanalytics.net