第4クォーター残り38秒。
右コーナーからウィングに上がった増田は逆サイドのファジーカスに手をあげて合図。

「こっち!」

ファジーカスからパスを受けた増田はラストショットをスリーポイントで沈めました。
増田はルーキーながらこのビッグゲームのラストをチームハイの13点目で締めました。

第96回天皇杯決勝、川崎ブレイブサンダース対宇都宮ブレックスは60-76で川崎ブレイブサンダースの優勝で幕となりました。

下馬評通り川崎は強かったのですが、この日の試合で注目していたのは、

準決勝でアルバルクを苦しめた宇都宮のローテーションディフェンスを川崎がどう攻略するのか?

川崎のオンスリーのヒース、アギラール、ファジーカスのビッグラインナップが宇都宮にいかに機能するのか?

そんなところに興味を持って試合を観戦していました。

【増田の積極性】

第1クォーターは両チームお互い譲らない滑り出しでした。
川崎は前日に引き続き調子が良さそうなヒースと大塚のタッチがよく、一方で宇都宮は比江島が2本のスリーポイントを沈めるなど好調です。

ゲームが動き出すのは第2クォーター。
ここで積極性を発揮したのが若武者増田です。26-27の拮抗した展開からピークのブラインドから抜けてスリーを決めてこの日の初得点をしてチームのペースを導きました。

宇都宮田臥がスリーポイントを決めて宇都宮が乗って来そうになるところでは、相手の勢いにストップをかけるスリー、さらに続けてファウルをもらって2本のフリースローも確実に沈めました。

天性なのか、天然なのか、増田は試合のポイントになりそうなところで積極的にシュートを放っています。

川崎は宇都宮に比べてスリーポイント確率が高かったことが勝因のひとつです。
この日宇都宮のスリーポイント確率は27.6%。
対する川崎は42.3%です。第2クォーターの川崎のスリーポイント攻勢は大塚、増田、ヒースが引っ張りました。

【宇都宮ディフェンスとの相性】

宇都宮はそのディフェンス力でリーグ戦現在1位をキープしているチームです。


そのディフェンスの形はオールスイッチしてローテーションして守るマンツーマンと、バックコートで仕掛けるゾーンプレス、ブリッツなどのトリックディフェンスが特徴です。

鵤、遠藤はバックコート陣の中でも体格がありフィジカルが強く多少のミスマッチは問題にしないところがこのオールスイッチを有効にさせている点であろうと思います。


スイッチを素早く繰り返してローテーションする事で遅れの少ないディフェンスを構築していました。

しかし、川崎はこのローテーションをあまり苦にしていなかったように見えます。


そのひとつは川崎の攻撃の特徴であるファイブアウト。


ビッグマンのヒース、ファジーカス、アギラールがトップの位置からなどのアウトサイドからスリーポイントを狙うところにあります。

川崎ビッグマンから外から狙われるとマッチアップのスコット、ロシター、ギブスが外に釣り出されるため宇都宮の強みのリバウンドが疎かになります。そのためスコット、ギブスあたりはあまり外には出ません。ビッグマンのシュート確率は上がります。



一方で、遠藤、鵤がスイッチして川崎ビッグマンとマッチアップした場合はどうでしょう?

流石に210センチ級のビッグマンは防ぎきれないでしょう。この試合でも川崎はミスマッチを狙っていたように思います。宇都宮ディフェンスに対して川崎の攻撃陣は相性が良いのです。

【宇都宮のローテーションを攻略】

宇都宮のトリックディフェンスに対して川崎の攻撃が宇都宮ローテーションのウィークを突いたシーンが第2クォーター残り4分16秒にありました。


右ウィングの位置でヒースと辻がハンドオフプレーをしたところ、辻に対して田臥とスコットでダブルチームでブリッツに行きました。ヒースはスクリーンのあとトップに回り辻のパスを受けます、そこにディフェンスに来たのは左ウィングにいた遠藤、オフェンスの左ウィングにいた藤井にはエンドコーナーにいた比江島がローテーションします。

オフェンスのエンドコーナー増田のマークは?

辻にブリッツに行っていたスコットが右ウィングから左コーナーまで1番遠いところから戻ります。

川崎は、ヒース→藤井→増田と素早くパスを展開。スコットがたどり着く前に増田のスリーをメイクしたのです。

その隙間は1秒ないでしょう。スコットのほんのすこしの遅れをついていました。

【川崎のオンスリーの効果は】

川崎は開幕からビッグマン3人をコートに置くことを実践していましたが怪我人などの影響でなかなか成熟していませんでした。ここに来てラインナップが揃い(カルファニは戻っていませんが)
この日も多くの時間オンスリーの時間がありました。

果たしてその効果はこの試合ではあったのでしょうか?


まずリバウンドではその効果はあったと言えるのか。

もともと宇都宮はリバウンド奪取率がリーグトップクラスのチームです。


リバウンド最強の宇都宮の39本に対して川崎40本、は合格なのかもしれません。

ただし、オフェンスリバウンドは宇都宮に15本取られています。対して川崎は9本でしたので絶大な効果、ではないようです。

川崎ビッグマンのアウトサイドのシュートについてはどうか?


この日に限ってはファジーカスをはじめビッグマンのスリーポイント確率は28%でしたのでオンスリーにして貢献のあったという数字ではありません。

ただし、宇都宮のオフェンスに威圧感は与えていたかもしれません。

【リーグ戦に向けて】

川崎はBリーグになってから天皇杯というタイトルを初めて獲り、チーム状況も上向いているように思います。 


なんといっても、この日の増田のように、若手が臆することなく積極的に思い切りプレーできるその環境がある。


それが川崎のチームとしてのカルチャーなのだと推測されて、それは天皇杯優勝に相応しい素晴らしいチームなのだと思います。


リーグ戦は東地区3位以下が混戦模様です。
ここからどこが抜け出すかわからない状況ですが宇都宮はもちろん川崎は優勝候補に違いない。そのように感じさせた天皇杯でした。

photo kii